おもしろき こともなき世を おもしろく

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武士道の何事か

 武士道。最近もこれを英語で説明するのに骨を折った。というか、未だ説明しきれてない。武士道、というものは有名であっても実体がなく、その時代によっても形態が変わり、江戸時代に儒教を取り入れてはじめて完成されたと言われても、人により受け取り方も違う。そもそも、これだ、という答えがない。世に著名な新渡戸稲造の「Bushido」もそれが答え、ではないだろう。

ただ、自分が考える武士道の、少なくともひとつに挙げられるものが、下記黒田官兵衛に求めることができた。 

・・・が、我慢した。

善助はかくべつ船に弱いらしい。真蒼な顔をしているが、背骨をちゃんとのばして、懸命に耐えてもいる。官兵衛も、食道へ胃の中のものが逆流しそうになるのを気力でおさえ、顔だけは涼やかな表情を保たせていた。

「善助、苦しいか」

「なんでも、ございませぬ」

善助は、仏像が結跏趺坐しているように足を組んでいる。両足を交差させ、足のうらを上にむけているのである。このようにすわるのは苦痛なのだが、せめて足の筋肉を痛めておくことによって、気をまぎらわせようとしているのである。

官兵衛は、そんな善助を気に入っていた。

「善助。侍とは我慢がしごとだ」

と、いった。

胴ノ間では、ひとびとが寝ころんでいて、うめき声をあげたり、その場に物を吐いたりしている。かれらは百姓や商人たちなのだが、侍がかれらとちがうところは体じゅうの血が逆流しても静座していることだ、と官兵衛がいった。

官兵衛も牢人の子だし、善助も百姓の子である。

庶人とすこしも違わないし、官兵衛自身、自分が特別の階級に属する人間だということを生涯おもったことがないし、それが、官兵衛だけでなく黒田家の家の風といったようなものでもあった。

ただ、侍は無用の自律をするものだ、ということを官兵衛は思っていたし、それが官兵衛のいわば侍の定義であった。

ここは、無用の自律をせねばならない。吐きたくなれば吐くというのでは侍ではない、と官兵衛はおもっていたし、それを善助も真似ている。

二人の小者に対しては、官兵衛は寛大であった。かれらをごろ寝させていたし、気分が悪くなると上へ走らせたりした。

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