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武士道頽廃

「討死」

戦国の最盛期ともいうべき元亀・天正年間には、人の将たる者がこういう言葉を軽々には口に出さなかった。討死とは敗北であろう。戦国にあっては合戦は勝つために存在し、みすみす負けるときまったいくさは避けた。避けざるをえない場合は降伏した。降伏しない場合は、その悪条件をもってなんとか勝つべく知恵をしぼり、不可能とおもわれる行動までとった。

死をもって美と考えるようになったのは江戸初期、ことに中期前後からのことで、泰平が生んだ特異な哲学であったが、ともかくも戦国にあっては武士はあくまでも勝たねばならず、ひとびとは勝利をのみねがい、たとえ万策尽きて一時降伏してもそれはあとで勝つための便法であることが多かった。

ところがこの大阪夏ノ陣ぐらいから、死への賛美がはじまるのである。それも勝って死ぬのではなく敗けて死ぬことを壮烈とした。さらには死そのものを飾りあげる精神も、この時代からすでに葦牙の芽のようにして出かけている。

大阪方の塙団右衛門も、浅野方の浅野忠知も、実戦歴という点ではゆたかすぎるほどの古武者であり、また主家を何度もかえることによって世間も渡りあるいてきた。戦国というものを体のなかで知りぬいているはずの男が、壮烈な敗北死という、主家にとって迷惑至極な美のとりこになり、かつそれを誇示しようとしている。武士道の頽廃がすでにこの時代にはじまっているとみていいであろう。

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