粋華志義

戦国環境

 「ばくちをするからだ」

と、松蔵はいう。戦乱のころは侍どももばくちをし、戦場でもそれをやり、賭け物がなくなればつぎの戦場で獲る首を賭け、いつも囊中に風がふき、金銀などは身につかず、平素ははだかでくらし、この世は所詮は勝負よ、ばくちよ、泡のごときものよ、とおもって暮しているために身に未練がない。いま、世定まって侍の風儀がよくなり、おのれの身上を愛するがゆえにばくちもせぬようになったが、中間どもは日ごとそれを打ち、負けもし、勝ちもし、つねにおのれの心胆を練っている。(今)もし戦があれば侍が強いか中間がつよいか。