粋華志義

景勝兼続其の壱

「恐れながら お断りいたします。 我が主君は 上杉弾正少弼景勝をおいて他にございませぬ。 それがし 幼少の頃より主 景勝に仕え 共に命を懸けてこの乱世を生き抜いて参りました。 十万億土に旅立つ日こようとも 主の傍を離れるわけには参りませぬ」

申し遺すこと

本日御城中にて我が身並びに家老兼続に万が一の事ある時は家来一党直ちに大阪を発し例え四千人が四人になろうとも必ずや越後に帰り着くせき事

皆に我が無念を伝えたのち天下の軍勢を引き受け一戦に及ぶべき事

関白殿下は主従の仲を裂き君臣の道を汚す不義不道の人と知れたり

その軍勢百万を誇ると言えども恐るるに足らず

義を貫くべし

例え家中残らず討ち死にとなろうとも上杉家正義の義名を千年の長きに伝えるべき事