粋華志義

坂本乙女あて/慶応三(一八六七)年四月初旬

さてもさても、お話のおかしさは腹を抱えて笑うほどでした。秋の日和の例えが、一番面白くておかしいと思いました。私はあの浮木の亀のことわざのように予想もしないことが次々にあって、先が見えませんでした。

この頃、妙な岩に行き当たり、しゃにむに上りました。そこで四方を見渡すと、世の中は牡蠣殻ばかり。人間は世のなかの牡蠣がらの中に住んでいるものですなあ。おかしいおかしい。めでたい、さようなら。

龍馬
乙姉様みもとに。

なお、おばあさん、お母さん、おとしさんのお歌、ありがたく拝見しました。さようなら。

なお、去年は七千八百両の支払いでヒイヒイ困っていましたが、薩摩藩の小松帯刀という人が出してくれ、神も仏もあるものと思いました。

先日は、私の手持ちの金がなく一万五百両という金が必要と気をもんでいましたら、思いがけなく後藤象二郎という人が出してくれました。この人は同志の中でも興味のもてる人です。

さようなら。