粋華志義

【第29回】ダイヤモンドのスマートな選び方 驚嘆すべきカット職人の話

その理想のプロポーションとは、 実に細かい角度、割合よりあります。

40.75度などとは、まったく驚嘆すべき細かさです。 このように図面で見るとまだ理解しやすいですが、 実際にカットするダイヤモンドの大きさのことを考えると、 その凄さに頷けるはずです。

少し余談になりますが、 イスラエルのダイヤモンドカット職人であるエフィ氏に実際に聞いたこんな話があります。


ダイヤモンドカット職人・エフィ氏

イスラエル在勤当時、 兼ねてから疑問を持っていたことがありました。

「1つのダイヤモンド、カットするのにどれくらいかかるのだろう?」

そのオフィスにはカット職人も よく出入りしていたので折を見て聞いてみました。 すると、

「それはハードな質問だね~」

と職人さんエフィ氏。

「そりゃモノによってピンキリだよ」

そりゃ、そうです。 でも大体というものがありましょう。 それを言ってみると大体、 1個のダイヤモンドをカットしてポリッシュするのに 2時間や3時間、そのような程度(感覚)だそうです。

なるほど。 そして念を押すように付け加えてきます。

「しかしやはり一概には言えないね・・・」

何故か、ニヤニヤしています。 どうにもはっきりしないので、私は質問を改めました。

「では一番早いものでどれくらいの時間がかかるのか」

すると

「5分くらいだな」

とエフィ氏。 0.02ctなどの小さいダイヤモンドをシンプルカット(8面カット)する場合、 5分くらいで仕上がるそうです。 そんなに早くできるものなのか、私は驚きました。

続いて

「今までで一番時間がかかったのはどれくらいか」

するとエフィ氏は「来たな」と言わんばかりに ニヤニヤして即答はしない。 さらに問い詰めるとその答えに私は驚きました。

「two years and half」

なんと、ひとつのダイヤモンドをカットするのに2年半かかったというのです。 どれほどのダイヤモンドなのかというと、245ctという巨大さ。 2年半もの長い期間をかけて、 同じダイヤモンドを研磨し続ける。。。 気が狂いそうな作業ではありますが、 エフィ氏はそれが誇りでもあるように話してくれました。

たしかに、 245ctのダイヤモンドなどカットに失敗など許されないでしょう。 おそらくは全神経を集中し続けてついに仕上げた大仕事だったと思います。 私はこれを聞いて本当に驚嘆しましたが、 ピンが5分でキリが(エフィ氏の場合)2年半、 なるほどカットとはピンキリであり ダイヤモンドの奥の深さに触れた瞬間でもありました。