粋華志義

【人間力第31回】汝の敵を愛せよ

 以前の会社にいたときの出来事です。

私が担当するお客様であるひとつの会社の事であります。いつもやりとりをする先方の2人は“ひとくせ”も“ふたくせ”もある人で、担当である私はおろか、直接関わりを持たない他の従業員ですら、皆嫌がっているお客様がいました。

私は、ある時とうとう生理的に受け付けないほどになってしまいました。文字や名前を聞くだけでも憂鬱になり、体がそれだけで“全否定”してしまう状態まで陥ったのです。それは、職場全体に伝染している様でもありました。途中何度か取引自体を断る話もありましたが、そんな時に人格者でもある当時の(私の勤める)社長に言われたのでした。

「彼等を、笑わせてやろう!」

人は、えてして他人の悪い点ばかり注目しがちであります。さらには(実際の現場に立たないと理解できないであろう)あの状況で右の様な“発想の転換”を提案してもらえた社長には感服するばかりであります。

とにかくこの発想の転換のおかげで、その後私が出来た対応が変わったのは明快であり、改めて思考のスイッチをひとつ(本当にひとつだけ)変えるだけで、こうも違うものかと驚くばかりでありました。