「好きなモノに理由はいらない」
そうはいっても、
自分が好きなモノであるカルティエの魅力を語れないわけではありません。
筆者がカルティエに魅力を感じたポイント、
ひとつ挙げてみたいと思います。それは、その歴史であります。
今ではブランドを代表するシリーズとなったいくつかは、
その始まりが「大切な人の為に」作ったものなのです。
まずはサントスの時計。
1904年当時、飛行家としてすでに著名であった
アルベルト・サントス・デュモンは
「飛行機を操縦しながら時間を見るのに懐中時計ではとても不便だ」
と友人のルイ・カルティエに話しました。
そこでルイが大切な友人のために作った時計が、
カルティエ初の男性用腕時計でした。
続いてトリニティは、
1924年に詩人ジャン・コクトーの為に
オーダーメイドで製作したもの。
ジャンがその友人であるラディゲに贈る為に
カルティエにしたそのオーダー内容は、
「未だかつてこの世に存在しないリングを作ってほしい」
というものでした。
そして1930年頃にはパシャが登場します。
マラケシュのパシャであったエル・ジャウイ公から
「泳いでも平気な腕時計をぜひとも作ってほしい」
という依頼で、
またもルイ・カルティエはその要望に応えるべく
防水時計の開発に着手しました。
これら代表するアイテムが誕生するには、
「大切な人の為に」製作したという物語があります。
この“スタイル”が、
筆者にとってカルティエに対して感じる大きな魅力となっていきました。
このジュエリー連載を書く前に、
筆者自身がまずカルティエを愛して止まない
ファンだということを記させてもらいました。